ハッピークリスマス

一年の中でもクリスマスほど街中が色めく日はないだろう。寒空の下、イルミネーションに照らされた街を行く人たちの足取りは軽やかだ。

誰もがこの日を分かち合うための相手を持っているように見える。

俺は午前中にアルバイトが終わると、そのまま家に帰るのも惜しい気がしたので、行く当てもなく街へと出てみた。クリスマスで賑わう街から、おこぼれの1つにでも与れるような気がしたんだ。

当然世間は俺みたいなクズに何か恵んでくれるほど太っ腹じゃない。混み合った通りを歩いていると、俺のなかでむかむかする何かが込み上げてくる。濁った汚水のような悪臭をプンプン放つ何かが。

そいつを一言で表そうとするのは簡単なことじゃない。俺のなかで長年蓄積されてきたさまざまな嫉妬や恨み、挫折や劣等感からできているからだ。

でもそれよりもうんざりするのは、俺がそのムカつきを抑え込むために必要だと思い込んでいるものだ。

本当ならばもっとお金があって、可愛い彼女がいて、かっこいい服を着て、小洒落たレストランでディナーを食べて、ホテルで一晩を過ごして…

金を払ってでも聞くのを願い下げたいような願望が、ひとりでに頭のなかでガンガン響いてくる。耳を塞いでも、音楽を聞いても鳴り止まないんだ。

俺は、居場所なんてない所へと、のこのこ出てきたことを即刻後悔した。

(続く)